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ESG投資は投資家が本来もつ善なる欲求か「不動産のESG投資」への意識を問う調査結果

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文/朝倉 継道 イメージ/©paulgrecaud・123RF

近年話題の「不動産のESG投資」とは

ESG投資という言葉をご存じだろうか。EとSとGはそれぞれ頭文字だ。環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を意味している。

ESG投資とはすなわち地球環境や、社会の公正に配慮し、そのための責任ある企業統治を行っている企業を重視し選別しながら行う投資を指す言葉だ。

併せて、これらを投資判断のための重要な指標とすることで、社会的意義をもつ企業や、その事業を育てていこうとする考え方でもある。

そのうえで近年、「不動産のESG投資」といった言葉もよく聞かれるようになった。文字どおり、環境や社会に対し、公正かつ意義のある不動産投資のことをいう。

例えば、身近で具体的な例が、空き家や空き店舗の再生だ。これらを安易に取り壊し建て替えるのではなく、必要最小限の資材を使い効率的に再生することで、余分な廃材や廃棄物をださずに済む。すなわち、環境への負荷が抑えられる。

そのうえで、地震に対し脆弱だった建物が、その事業によって耐震化されれば住む人、利用する人の安全面においての社会的寄与も増加する。

加えて、遮熱・防湿性能も高まれば、それは人々の健康面にプラスとなる。併せて、省エネルギーが進むことで、地球環境の維持に少しでも貢献できることとなる。

また、その際、事業を行う企業にイリーガル(違法または非合法的)な点がなく、日本人・外国人を含めた従業員などへの不当な扱いもないとすれば、以上はE(Environment)、S(Social)、G(Governance)を踏まえた、意義ある不動産投資といっていいだろう。

ESGという言葉を知っていたのは20代では約半数

さて、そんな「不動産のESG投資」について、グローバル都市不動産研究所(株式会社グローバル・リンク・マネジメント)が、「不動産投資オーナー400名に聞いた」とする調査を行っている。

不動産のESG投資を「不動産投資において、リスク・リターンだけでなく、環境・社会への好悪の影響を考慮すること」と、定義したうえで、いくつかの質問を「投資用不動産保有者」である全国の男女に投げかけている。

いくつか内容を紹介しよう。まずはESGの認知だ。「あなたは、ESGという言葉を聞いたことがありますか?」との問いかけに対し、「聞いたことがある」とする世代別の答えはこうなっている。

「ESGという言葉を聞いたことがある」
25~29歳 …51.9%
30~39歳 …35.8%
40~49歳 …29.2%
50~59歳 …31.5%
60~69歳 …24.1%

ご覧のとおり、25~29歳での数字が特に伸びている。なお注意したいのは、この25~29歳は、普通の25~29歳ではなく、不動産投資家であるということだ。

若くして、不動産という規模の大きな投資にチャレンジしている層におけるある種の横顔が、もしかするとここに垣間見えている可能性もある。

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不動産のESG投資の重要性は

次に、「不動産のESG投資は、投資先を判断する材料・要素として重要だと思いますか?」との質問に対し、「重要だと思う」さらには「どちらかというと重要だと思う」と、答えている割合を挙げてみたい。

「重要だと思う」
25~29歳 …30.8%(1位)
30~39歳 …28.3%(2位)
40~49歳 …22.5%
50~59歳 …18.5%
60~69歳 …24.1%

「どちらかというと重要だと思う」
25~29歳 …44.2%
30~39歳 …53.3%(2位)
40~49歳 …42.5%
50~59歳 …46.3%
60~69歳 …53.7%(1位)

ご覧のとおり、ここで若干面白い結果が表れている。「重要だと思う」と言い切る割合は若い世代に多いが、それよりもマイルドな(?)表現で不動産のESG投資の重要性を認める割合は、逆に、もっとも年齢の高い60代で多い(ただし2位の30代とは僅差)。

そこで、これをさきほどのESGという言葉自体への認知の割合と比べると(60~69歳はもっとも低かった)どうだろう。

「ESGという言葉は知らなかったが、このアンケートでそれを知った。そういう考え方ならば未来のためにいいんじゃないか」

そんな、60代=オトナの声が、数字の合間から浮かび上がってくるような上記の結果となっている。

次に、この質問を紹介したい。

「不動産のESG投資は、特にどのような分野が重要だと思いますか?(複数選択可)」

以下の数字は、各年代合わせた全体の割合だ。支持の多い順に挙げていく。

「地域社会・経済への寄与」(例:空き家・空き店舗の再生、近隣を巻き込んだ再開発など)…51.7%

「気候変動への対応」(例:省エネ性能、再生可能エネルギー利用、ゴミ排出抑制機能、建材・廃材のリサイクルなど)…47.6%

「健康性・快適性の向上」(例:防湿・防音、抗菌・非接触、緑化・照明など快適さを増すデザイン性など)…41.8%

「災害への対応」(例:地震対策、台風・水害対策など)…33.9%

「超少子高齢化への対応」(例:保育所設置、ヘルスケア施設やクリニック併設など)…22.9%

「不動産を提供する企業・ファンドの適格性」(法令順守・経営能力など)…15.8%

以上のとおり、「地域社会・経済への寄与」というローカルへの貢献と、「気候変動への対応」というグローバルへの貢献に対する支持が、最上位とその次を占めている。

とりわけ1位の「地域社会・経済への寄与」は、不動産投資における、社会的存在意義の“核”といっていいのではないか。

また、これは、不動産投資を行う人々の多くが、実は、経済的利益に迫るほどの欲求として無意識下に抱いているものであるのかもしれない。(ぜひそうあってほしい)

そうした、投資家自身の中にある根源的な想いに気付き、忘れずにいることは、不動産投資を物心両面において成功させるうえでの最大のツボであるようにも筆者には感じられているのだが、いかがだろうか。

今回のグローバル都市不動産研究所の調査結果は、下記のリンク先でご確認いただくことができる。紹介していない他の内容についても、ぜひ目を通してみてほしい。

グローバル都市不動産研究所 不動産投資オーナー400名に聞いた『ESGに関する意識調査』

 

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この記事を書いた人

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